恋する想いを文字にのせて…
「どうでしたか?津軽先生との対面は?」


白く寒そうな肌をしている人に話しかけると、俯いたまま答えが返ってきた。


「幸せな時間でした。この最近には無かったくらい満ち足りていたと思います。何もかも小野寺さんのおかげです。本当に、有難うございました…」


急に立ち止まり、深々と頭を下げられた。
それを手で制して、「そこまで深く礼を言われることはしていません」と返した。


「俺がいない間、ゆっくりと話せたんですね。漫画のことも、あれこれ話して聞かせてくれたでしょ?」


話し好きな2人の顔を思い浮かべた。
最上来未は頷きながら「ええ、まあ…」と曖昧な答え方をした。


歩く道すがら、田畑の景色が白く染まっていく。

粒状だった雪は確実に大きくなり始め、緩くカールした彼女の髪にも絡み始めた。


行きにあれ程元気の良さそうだった人は、妙に黙りこくっていた。

その様子を斜め上から覗き込み、これまでと違う雰囲気を感じ取った。




「来未さん……」


声をかけると、ビクッとして立ち止まった。

震えるような眼差しが向けられ、ドキン…と胸が締め付けられた。



「…何ですか?」


小さく開けた唇の隙間から声が漏れた。

その唇を見つめながら、俺は彼女の髪に手を伸ばした。


「雪が……」


頭の上に乗っている雪を払いながら、じっとしている人の顔を覗き込んだ。

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