来い、恋。

桜葉は呆れた様子で溜息をつく。
人に溜息どうのこうの言う割に、自分も溜息吐くんかい。


「…はあ…にしても、ガラの悪ぃ兄さんだったな、町傘、本当に大丈夫か?」


「…あぁ、心配ないですよ。彼、警察官ですから。」


「ぅえっ?!」


なんで咲和が警察官と付き合うことになったのかとか、今日の朝ごはんは何を食べただとか、そんなたわいない話をしながら駅へ向かう。

途中、さり気なく車道側を歩いてくれたり、狭い道で自転車が来たときにちょっとだけ前に出て庇ってくれたり、…いちいちやることがスマートで、少しだけ見直した。


「…じゃ、カラオケ楽しんで」


駅裏に着いたところで、本日はお疲れ様でした。と一礼。


「え?ウメ、カラオケ行かんの?」


「…行かんですね。帰ります。
では失礼します…っ…?!」


駅へ向いて歩こうとしたのに、ぐいっと肘を捕まれ、自動的に桜葉の元へ連れ戻される。


「ウメ、さっきのさ、居酒屋での話だけど、…好きが分からんのでしょ。」


突然なんだと思えば、この人はいつも、なにかしら突然だな。話しかけ方といい、溜息からの指摘だったし。


「…はあ。唐突ですね。…まあ、そんな事言いましたけど。」


先ほどの居酒屋でうっかり口を滑らしたあの話、できれば忘れていて欲しかったけれど。どうやら桜葉に話したのは間違いだったらしい。

あの時魔が差して話していなければ。そう少しだけ後悔しても、もう遅い。

次は、何を言われる?説教?
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