来い、恋。

1*恋は突然

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…どうしてこうなった?

「薺(ナズナ)は考え過ぎなの!
恋は探しちゃ駄目なのよっ!」


誰か、この子にお酒でも盛りましたか。
おかしい。今日はお酒抜きだった筈だ。


今日は、大学1年生のオリエンテーションゼミナール終了を祝して、それらの中心となって動いていた私達2年生は打ち上げに来ている。…んだけど。


「ちょっと誰ですか、咲和にお酒盛ったの!!」


咲和が手にしていたウーロン茶らしき飲み物を奪い取り、1口呑んで確かめてみると、それは紛れもなくお酒。ウーロンハイ。…嗚呼。やらかした。


20歳を越えてからまだ日は浅い。
にも関わらず、町傘咲和(マチガサ サヨリ)は「2年の町傘は酒癖が悪い」と既に要注意人物扱いだ。
私は盛大に溜息を吐いて、咲和からウーロンハイを遠ざけ、自分のウーロン茶を持たせた。


「薺、私は貴女が心配よ〜〜」


えええ…ちょっと、勘弁して…。
もう、本当に誰、この子にお酒呑ませたの!


かばぁっと私に抱きついて来た咲和をよしよししながら、もう一度溜息を吐いて、反対側の手で箸を進める。
が、咲和はそんな私に話しかけるのを止めない。


「…だからねえ、薺。恋ってゆーのはね、突然やってくるもんなの!だから焦っちゃあ駄目よお…」


ぐすんぐすんと何故か半泣きの咲和が言ったこの言葉を、私は思い知ることになる。


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