来い、恋。

ええ?と私は首を傾げた。


「…いやぁ。そんなさ…好きなものに対して、日常的に好き好きって言う?」


私からしたら、家族や、咲和も好きだし、お酒も映画もスポーツも好き。
それと同じように、当然、彼のことも好きだった。


「…咲和だって、日々過ごしてて、『お母さん、好きだよ』とか言わないでしょう?」


お母さんには言わないのに、恋人には言わなければならないんだろうか。
言わなければ、愛されていないんだと思われるほど、私は何もしなかった訳じゃないと思うのに。


そうじゃないんだよ〜、と咲和は明らかに困った顔をして、恋人に好きだと伝えることが如何に大事かを教えてくれたけれど、どの話も、いまいちピンとこなかった。


好きって、なんだろう。
私にとっては、全部好きで、全部大事なんだけどな。恋ってものは、難しい。


私はきっと、好きから恋に達したことがないんだ。だから分からないんだ。本当の恋をすれば、私にだって分かる筈。きっとそうだ。うん、そうに違いない。


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