来い、恋。

「そんな…」
守ってるの、私だけ?


「ほい。呑む?」


唖然とする私に彼は茶色い飲み物を手渡す。
私がウーロン茶だと思っていたこの飲み物は、ウーロンハイだったらしい。
自分だけ言いつけを守っていたというのは、なんだか裏切られたような気がして悔しいので、受け取ったウーロンハイを一口だけ含む。


「あ、それ俺の呑みかけ」


「ぶふっ…」


「嘘だよ。ちょっ、汚いなー」


……なんだとう…?


ゲホゲホと噎せ返る私にハンドタオルを投げ渡す。何コイツ、女子力高いな。と思いつつそれをよく見ると、私が今日持ってきたハンドタオルと全く同じ物だった。

勢いよく彼の方を見ると、やっぱり楽しそうにケタケタと笑っている。


「顔が忙しいヤツだな。…それ、ウメのでしょ?」


いや、そうですけど。なんでアナタが持ってるんですかね?
思ってることが顔に出ていたらしい私を見てから、「それさ、」と、ハンドタオルを指差す。


「陽(ヨウ)に貰ったやつなん?」


それを聞いた瞬間、私の中の何かが、ピキッと音を立てて固まった。


「…え"。」


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