来い、恋。

「好きが分からない、ねえ…」


何かのドラマや映画みたいだな、と彼が言ったとき、遠くの方で丁度今日の会の幹事からお開きの声がかかった。


「今日はお開きにしまーす!
二次会参加の人は今から30分後までに駅裏のカラオケに集合!」


するとすぐに、各自がわいわいと盛り上がりながら、当たり前のように二次会の準備を進めていった。


咲和のこともあるし、元々行く気も無かったことだし、今日は帰ろう。
…少し喋り過ぎてしまったし。
もうちょっと頭を冷やそう。

自分の帰り支度と同時に、咲和の帰り支度を済ませると、未だにスヤスヤ眠る咲和に声をかける。


「…咲和。起きてっ。帰りますよー
咲和ー?…おーい?」


…爆睡だなこれ。
ペチペチと頬を軽く叩いても起きる気配が全く無い。しょうがないな。

ポケットから携帯を取り出し、電話をかける。

「あ、もしもし。亮さんですか?
咲和が酔い潰れちゃったんで、…はい。
…あー、そうです。…その右側の居酒屋です。よろしくお願いします。」


電話を終え、よし、と一息つく。
咲和の彼氏の亮さんは警察官で、見た目は怖いけど中身は咲和想いのとってもいい人だ。…ほんとに見た目怖いけど。
咲和が酔い潰れた時はいつも迎えに来てもらっているが、いつもその後こってりと怒られているらしい。
だからなのか、酔い潰れたら意地でも起こせと咲和に言われているけど、亮さんは今たまたま近くにいるらしく、恐らく咲和の酔いが覚める前に迎えに来るだろう。
ということで、咲和は後から怒られるの決定。ごめん。咲和。


「亮さん?」


「うわっ …びっくりした。ていうか、まだ居たんですか。」


まだカラオケに行ってなかったらしい桜葉が、背後から私の携帯を覗き込む。


「なに、彼氏?」


「ええ、まあ、はい。」

咲和を見ながら答えると、ふうん。と少しだけ不機嫌になった桜葉。


「陽と別れたばっかなのに?」


は?この人はなに勘違いしてるの?


「いや、…あ、」

亮さんは咲和の彼氏です、そう言おうとした時、着いたと思われる亮さんからの着信が入った。本当に近くに居たんだなあ。


「着きました?早いですね。
…了解。表出ます。」


携帯を収め、ちらっ…と桜葉の方を見る。


「桜葉、手伝ってくださいね!!!」


もちろん、満面の笑みで。

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