来い、恋。

(無理矢理手伝わせた)桜葉と二人がかりで咲和を抱えて表へ向かうと、黒いヴァンガードからガラの悪いお兄さんが走って出てきた。


「薺ちゃん、いつもごめんね。」


亮さんは咲和を受け取り、よっこいしょ、と簡単に肩に担いだ。
何度も見る光景だけど、いつ見ても女の子に対するやり方じゃないよなあと思う。


「こちらの方も、どうも有難う。」


桜葉は初めて見るこの光景に顔を引き攣らせながら亮さんに会釈する。
まあ、初めて見たら、こうなるよね。
どう見ても悪者に攫われる女の子の図だもんね。


がっちり固められたヘアスタイルにサングラス。黒のレザージャケットにいかにも高級そうな革靴。そんな、全身黒で身を包む亮さんは、立派な咲和の彼氏です。そして警察官です。


「咲和には、よーく言っておくよ」


「お手柔らかにお願いしますね〜」


車に咲和を乗せて、もう一度私たちに挨拶した後、亮さんは颯爽と帰っていった。


「…おい」


「なんです?」


明らかに不満げなオーラを放つ桜葉に視線を向けると、予想通りギロッと上から私を睨む。


「だーれーの、彼氏だって?」


「は?亮さん?だから、咲和の彼氏ですってば。勝手に勘違いしたのはそっち。」

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