Pathological love
1. alarm
気がつくと、花の盛りなんてとっくに過ぎてた。
結婚適齢期なんて目もくれず、猛ダッシュしてきた私は既に40を手前にした37歳。
私が働く間宮印刷は、創業は印刷業専門の会社だったが、時代が変わるに連れて今では広告代理店の様な仕事も兼ねる大手の企業になった。
夫は居なくても間宮印刷の花形、営業一課の成績トップまで、同期の誰よりも先に到達した。
結婚願望は無いけれど、女にはタイムリミットがあるのが現実。
結婚したから幸せとは限らないのは周りを見ていればよく分かっていた。
しかし面倒な事に、子供が昔から大好きで、それが私の最近の一番の悩みになっていると言っても過言ではない。
「あぁ~…やっぱ可愛い。れおくん!お姉さんの所においで~!」
「令ちゃん………お姉さんはさすがに無理があるんじゃ………。」
親友の堀口 友(ほりぐち とも)が呆れ顔で、空かさず私につっこむ。
「結婚してないんだし、別にいいじゃない。あっ!れおくんのほっぺぷにぷに~!!大福みたい!ねっ、食べていい?食べていい?」
なんとも言えない弾力のほっぺに噛みつく真似をする。
「ダメ~!!礼音(れおん)は私のなんだから!!」
友は8ヶ月の男の子を抱きしめながら私を睨んだ。
「うぅ~~~………ずるい~~~。私も赤ちゃん欲しい~~~!!」
最近の私は赤ちゃん欲しい病真っ盛りだ。
休みとなると友のアパートに入り浸っている。
「そんなに欲しいなら、さっさと好い人見つけて結婚したらいいじゃない。令ちゃんは年の割に若いし、綺麗なんだから、本気を出せばイケるでしょ?」
いつもの様に真剣な瞳で、毎度同じセリフを友が言う。
「…………赤ちゃんだけ欲しいんだけど………どうにかなんない?」
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