Pathological love
何度も聞き返したが、周りの声で聞こえない私は、そっと近寄って、耳を澄ませた。
何故か、一向に話し掛けてこないので、彼の瞳を探すと、連理は呆れたように溜め息をついた。
スッと私に手を伸ばし、顎に手を掛け、そのまま少し上に傾ける。
驚きで見開く私の瞳にさえお構い無しで、伏せ目に私を見ると、ゆっくりと唇の端をなぞった。
私の唇は彼の親指で、だらしなく歪められ、半開きの口は、バカみたいにそのままだ。
「子供じゃないんだから………チョコつけてんな。」
「ごっ…………ごめ………」
拭った親指を、何の躊躇いもなくペロッと舐めると、連理は微かに笑った。
ドクンッ………
その刹那、私の中の眠っていたケモノが動き出した。
あの日以来、もう、感じる事はないと思っていた私の心は今、また、アレに気づいてしまった。
鳴り止まない、この胸の高鳴りも、
時折感じる、切ない胸の苦しみも、
失いたくないと、切に願ってしまう、浅はかな思いも、
全ては、一つを表している。
私は……
私は、この人が好きだ…………………。
ずっと、ずっと、気付かない振りをしてきたのに、あなたはこんな簡単な事で、私を見えない糸で縛ってしまう。
恋は盲目とは、よく言ったものだ。
悪い人だと、分かっていても止められない。
まるで、ドラッグの様に私の身体を蝕む。
この病には薬はない。
ただ、自己治癒するか、堕ちる所まで堕ちるか。
それなら私は、後者を選びたい、私にとって、これが最後の恋になるなら…………。
お母さん………ごめんね。
私は、お母さんの言う通りのいい子には、なれそうにありません。