Pathological love
ピンポーン………
深夜にインターホンが鳴る事ほど、女にとって怖いものはない。
恐る、恐る、インターホンの画面を覗くと、それは満面の笑顔の親友だった。
「どうしたの?令ちゃん!…待って、今開けるね!!」
鍵を外してドアを開けると、なだれ込む様に彼女は玄関に座り込んだ。
「酔ってるの?………令ちゃん?」
「はははっ………酔ってまーす!飲み過ぎちゃいましたぁ~…。今日、やっと………契約取れたから………祝杯。」
「おめでとう!!やったじゃない!!これで、昇進間違いなしでしょ?」
「うん…多分ね。………凄い頑張りましたよ!やって、やりましたよ!」
「うん!うん!よく頑張ったね~!!」
ふざけて、礼音を抱き締めるように令子を抱き締めると、さっきまで笑顔だった彼女は、何故か私の胸の中で震えていた。
「泣いてるの?………令ちゃん。」
黙ってただ頷く令子を見て、その瞬間、私は気づいてしまった。
彼女が、泣いている理由を…。
「どうしても………ダメなの?」
令子は苦しそうに、嗚咽を漏らしながら、私に強くしがみつくと、小さな声で繰返し何度も謝った。
私に謝っている訳じゃないのは直ぐに分かったけれど、私は少しでも、彼女の罪悪感を和らげたくて言葉を返した。
「謝らなくても、いいんだよ………。」
私にはこんな事しか、力になってあげられないのかと思うと、もどかしくはがゆい。
それでも、ありったけの母性を集めて、彼女の気の済むまで抱き締めよう。
私を抱き締めて一緒に泣いてくれた、あの時の令ちゃんの様に。