Pathological love

ピンポーン………


深夜にインターホンが鳴る事ほど、女にとって怖いものはない。

恐る、恐る、インターホンの画面を覗くと、それは満面の笑顔の親友だった。


「どうしたの?令ちゃん!…待って、今開けるね!!」


鍵を外してドアを開けると、なだれ込む様に彼女は玄関に座り込んだ。


「酔ってるの?………令ちゃん?」


「はははっ………酔ってまーす!飲み過ぎちゃいましたぁ~…。今日、やっと………契約取れたから………祝杯。」


「おめでとう!!やったじゃない!!これで、昇進間違いなしでしょ?」


「うん…多分ね。………凄い頑張りましたよ!やって、やりましたよ!」


「うん!うん!よく頑張ったね~!!」


ふざけて、礼音を抱き締めるように令子を抱き締めると、さっきまで笑顔だった彼女は、何故か私の胸の中で震えていた。


「泣いてるの?………令ちゃん。」


黙ってただ頷く令子を見て、その瞬間、私は気づいてしまった。

彼女が、泣いている理由を…。


「どうしても………ダメなの?」


令子は苦しそうに、嗚咽を漏らしながら、私に強くしがみつくと、小さな声で繰返し何度も謝った。

私に謝っている訳じゃないのは直ぐに分かったけれど、私は少しでも、彼女の罪悪感を和らげたくて言葉を返した。


「謝らなくても、いいんだよ………。」


私にはこんな事しか、力になってあげられないのかと思うと、もどかしくはがゆい。

それでも、ありったけの母性を集めて、彼女の気の済むまで抱き締めよう。

私を抱き締めて一緒に泣いてくれた、あの時の令ちゃんの様に。


< 108 / 299 >

この作品をシェア

pagetop