Pathological love
ケンに見せつけようと、あえて恋人と来ている女を選ぶと、男が居なくなった隙にターゲットの女の横に座った。
強引に頭を自分に寄せて、女の髪を梳く。
「ちょっと?!止めてください!!」
案の定、女からは拒絶の言葉を浴びせ掛けられる。
「すいません。俺のジャケットのボタンに、あなたの髪が絡まってしまって…………申し訳ありませんが、暫くこのままで…。今、外しますから。」
近距離で女を見つめながら、また自分のテリトリーに女を囲む。
女は戸惑いながらも、じっとして、俺を気にするようにチラチラ見始めた。
(………掛かった。)
遠くのケンに目配せをすると、参ったとばかりにケンは頭を押さえる。
(チョロいもんだ。)
女は腕の中でモゾモゾ動くと、上目遣いに俺を見つめた。
「あの………お名前教えてください。私は、新嶋 美鈴(にいじま みすず)です!」
わざとらしく驚いた振りをしてから、ニッコリ笑う。
「俺は、秋山 連理です……宜しく。」
「あの、連絡先教えてください!!」
「でも、彼氏さんと来ているんじゃ………。」
「いえ!ただの友達です!!」
「そうなんですか?実はこのフロアにあなたを見つけて、ずっと気になっていたんです。可愛いなって………。」
「本当ですか?嬉しい!!」
品が良くて、金持ちそうな女は、名刺を出すと、俺に手渡した。
「私の連絡先です。良かったらこの後、一緒に何処かで飲みませんか?」