Pathological love
売り言葉りに買い言葉。
私は半分、ムキになっていたんだと思う。
不倫の一言で、私の恋愛の全てが無駄で無意味なモノと言われた様で、悔しかった。
「もういいでしょ?………離してよ。」
肩から彼の手を外そうと、手を掛けた時だった。
私の腕は簡単に掴まれ、痛いくらい強く壁に押し付けられた。
「あっ!!」
「俺の手料理を美味しいって食べたその口で、あの男とキスしてたのか?」
皮肉な笑顔を浮かべて、連理が私の心を傷つける。
「何その言い方?………………最低ね。これだけは言っとくけど、私は、斎藤さんと一度もキスなんて…ー」
その刹那、私の視界は連理の掌で遮られ、唇に熱いモノが押し付けられた。
「…んんっ………!!」
まるで息を吹き込まれ、蘇生したかの様に、私の心臓はドクンッと大きく動き出す。
瞳は何も映さないまま、感覚だけが研ぎ澄まされる。
唇と掴まれた所にだけ広がる体温。
触れるだけに留まらず、柔らかくて濡れた唇は私を犯し続ける。
息をする暇もなく、荒くなる息遣い。
静かなホテルの一室には、二人のリップ音だけが響いていた。
どのくらい経ったのだろうか、私は、立って居られなくて、思わず彼の腕にすがり漸く唇が離れた。
「はぁ…はぁ…はぁ………連理…掌…退けて………。」
一瞬、間があって、ゆっくりと視界が開ける。
ぼやけた視界の向こうには、熱に浮かされた様に真っ赤な顔をした彼がいた。
「…俺………………ー」
「………連理………どう…して?」
私と目が合うと、彼は驚いた様に目を丸くして、逃げるようにして出て行った。
腰から崩れ落ちた私は、その場に座ると、暫く動くことが出来なかった。
私の心は、驚きや不安、そしてそれを上回る、久し振りのふわふわした高揚感でいっぱいだった。