Pathological love
温厚そうな黒木さんから、直接的な言葉を聞いて、俺は内心ギクリとした。
やはり、彼は心療内科の医者なんだ。
「確かに、最近は女性に身体を求められる事に、嫌気がさしていたのは事実です。でも、それでも俺は今までそうやって自分の精神をコントロールしてきたんです。それが俺のスタンスなんで、今更変えられません。」
「そうですね……確かに、急に変えるのは精神的にも負担が生じるでしょう。あなたの生活も変わってしまう。あなたはあなたでは無くなってしまうかも知れません。」
「…………………。」
コン、コン………
「お茶をお持ちしました。」
「ああ、入って………。」
この部屋と同じ様に、清潔感の漂う女性が、お茶を運んできた。
俺がいつも相手にする女とは正反対で、お茶を置く手も、マニキュア一つしていなかったけれど、キチンと整えられていて、手入れがされた指はとても綺麗だった。
「ハーブティーです。リラックスできますよ。ハーブが苦手でしたら、違うものをお持ちします。」
「いえ………頂きます。」
はっきり言ってハーブティーなんて、生まれてこの方飲んだことも無かった。
部屋中に広がるこの香りも嫌いではないので、一口、口をつけてみた。
「如何ですか?」
「ええ、初めて飲んだんですけど、いいですね。お菓子やデザートに添えても合いそうだ。彼奴もいつもイライラしてるから、今度デザートと一緒に飲ませたらー」
途中まで喋って、俺は言葉に詰まった。