Pathological love
さっき、あんなことがあって、それどころじゃ無いってゆうのに、料理や美味しいものを見つけると、直ぐ彼女の顔が頭に浮かんでしまう。
あんな事をして、もう、一緒にご飯を食べる事も拒絶されてしまうかも知れなのに。
「手に入れてしまえば大事なモノほど、無くした時の喪失感は計り知れないと思います。」
「喪失感………。」
俺は、ずっと前からソレを知っている。
ソウシツカン………
ずっとずっとアレだけが欲しくて、その為なら何でも頑張ってきた。
こうすればもしかしてを繰り返し続けて、ある日その努力が全て無駄だったと気づいた時、俺は一番欲しかったモノを求める事を止めた。
向こうからくれるモノだけ沢山集めて、心を満たした。
偽物でも、空っぽよりはましだった。
生きていく上で、俺にはそれが必要だった。
「ですがー」
黒木さんが喋りだした話の途中で、俺は、遮るように立ち上がった。
「ありがとうございました。なんか、分かった様な気がします。俺もバカじゃないんで、同じ轍は二度と踏みませんから。」
「秋山さん………?」
「お茶…美味しかったです……御馳走様でした。」
黒木さんに一礼して、その場を後にした。
全てを悟ったあの時から、自分なりの蘇生術で一人でここまでやって来た。
俺は、間違っている訳がないと信じていた。