Pathological love
気がつくと、私は、帰り道をフラフラと彷徨う様に歩いていた。
頭の中は真っ白になって、全くの思考停止状態。
一度止まってしまったら、動けなくなりそうで、とにかく家に向かっていた。
あの人はさっき何て言っていた?
当時は夢にまで見た魔法の言葉だった。
いつ言ってくれるのか、待ちに待っていた。
それが今更?
ずっと音信不通だったくせに、どうして急に現れたのか。
考えれば考えるほど、頭の中はぐちゃぐちゃになった。
あの時の思い出ばかりが、波のように次々と押し寄せて、大声で叫んでしまいたくなった。
私の瞳からは思い出したかの様に、大粒の涙がボタボタと地面に落ちて、コンクリートのタイルの色を変えていった。
「あれ?令子ちゃん?やっぱりそうだ!」
顔を上げると、京子さんと奏也さんが立っていた。
「えっ!!何、何?!どうしたの?!大丈夫?!」
私は、目の前の京子さんにしがみついた。
独りでは立っていられなかった。
「奏也!!タクシー。」
「はい!!」
タクシーの後部座席に座った私は、京子さんの肩に顔を埋めた。
ここじゃない何処かに連れて行ってくれるだけで、十分だった。