Pathological love
「どう?少しは落ち着いたかしら?」
京子さんの事務所兼自宅のあの素敵な古民家で私は、いつものソファーに座っていた。
鼻水を啜りながら、渡されたティッシュで目を拭うと、京子さんは私の頭を撫でた。
「温まりますよ。」
そう言って、奏也さんが置いたのは、琥珀色の紅茶だった。
暖かいもてなしに、また涙腺が緩みそうになる。
「すいません……お二人ともお忙しいのに、煩わせてしまって…………。」
「何言ってるの!連理の大事な奥さんになる人が泣いているのに、知らん顔出来ないわよ!!それに私達、もう友達でしょ?ねっ?奏也。」
「別に、連理はどうでもいい……令子さんが心配なだけ。」
「あらやだ!奏也が誰かを心配するなんて、珍しい!ジェラシー感じちゃうわ!」
「京子さん!!」
真っ赤になって、怒る奏也さん。
久し振りの二人の掛け合いに、いつの間にか私は、笑っていた。
「フフッ………相変わらず、仲がいいですね。」
「あぁ~!奏也の所為で、笑われちゃったじゃない!!」
「俺の所為ですか?京子さんの所為でしょ?」
わざと明るく振る舞ってくれる二人に、私の心は幾分か晴れた気持ちになった。
「ねぇ?……連理と何かあったんでしょ?」
優しくも真剣な瞳で、京子さんは私に語りかけた。
「令子ちゃん、あなたにお願いがあるの。…………連理を見捨てないで欲しい。」
「見捨てるだなんて!!…………残念ながら、彼はそれほど私を必要としていません。」
「いいえ…そんな事ないわ。昔を知っているからこそ、これだけは信じて欲しい。連理はあなたを大事に思っているわ。」