Pathological love
いつの間にか秋山さんが傍まで来ていたのだ。
恥ずかしさのあまり、急いで体を離して体勢を整えた。
「すいませんっ!」
謝った視界には片方の手が差し出されていた。
「秋山です。宜しくお願いします!」
バッと顔を上げると、ボヤけた顔が何となく笑っている様な気がした。
(もぅ~~何なのよ!!格好悪過ぎるじゃない。)
「宜しく。」
動揺しているのを悟られない様に、差し出された手を軽く握り、殆ど見えない相手に向かって作り笑顔を返す。
「すいませんが私はこれで…………小森くん!何してるの?さっさと行くわよ!!車、いつもの所に回しといて。」
「は、はいっ!」
何事も無かったかの様に、平気な顔でその場を後にすると、その足で給湯室に向かった。
ピルケースから頭痛薬を取り出して急いで飲むと、誰かが給湯室に入ってくる気配がした。
「あっ!失礼しました!お疲れ様です!」
「お疲れ………私に構わず使っていいわよ。」
「はいっ!ありがとうございます!」
恐らく新人であろう女子社員をぼーっと眺めていると、何やら戸惑った様子で右往左往している。
「どうかしたの?」
「あっあのう………新しいお茶の葉がどこにあるのか分からなくて………でも、急ぎで頼まれてて………私…私…。」
今にも泣き出しそうな彼女に、軽く溜め息を吐く。
「泣いてたってしょうが無いわ…私が教えてあげる。お客様用よね?」
踏み台に登り、背伸びして棚の奥を探ると少しキツいがなんとかお茶に手が届いた。