Pathological love
徳永さんは少し寂しそうに笑うと大きく息を吐いた。
「そうか………もう、可愛いだけの俺の令じゃないんだね…………。」
「フフッ………はい、すっかりずる賢い女になっちゃいました。」
「いや、芯の通った素敵な女性になったよ。」
顔に掛かった髪を払いながら、徳永さんは私の頬に触れた。
「ありがとうございます。きっと徳永さんのお陰です。どん底になったから、私は仕事に向き合えるようになれました。あなたの手も、もう放して歩けます。」
頬に置いた手を取って、彼に返すと切なそうな表情を一瞬見せた。
「あぁー………尚更惜しいよ。上手くいかなかったら、俺の所へおいで。」
「フフッ…。」
「じゃあ、最後に一度だけハグさせてくれないか?親愛の印に。」
両手を広げる徳永さんは、あんなに大人だと思っていたのに、何だかとても可愛い人に見えた。
きっと、それだけ私も年を取って大人になったのだろう。
「最後ですよ?」
「海外では挨拶なのに?」
「自分で言ったんじゃないですかぁ~!」
徳永さんに近づくと、腕を掴まれて引っ張られた。
優しそうな顔とは逆に、力強い腕が私を抱く。
「………ありがとうございました。」
あなたを心から尊敬してました。
「んっ?随分しおらしいね。」
あなたを心から愛していました。
「………大好きでした………。」
「………俺もだよ………。」
抱き締める力がぎゅっと強くなると、私の瞳から涙が一筋零れ落ちた。
サヨナラ………過去の私。