Pathological love

「どうして眠れないか、自分で分かりますか?」


一瞬、彼女の顔が頭に過るけれど、俺は直ぐに掻き消した。


「いえ、分かりません。」


「秋山さん、あなたは今、嘘をつきましたね?原因は私に言われて、さっき頭に浮かんだ人の事ですよ。」


「彼女とは、そうゆうんじゃ無いんです。」


「どうしてそう………思うんですか?」


空きっ腹に酒が今頃効いてきたのか、黒木さんの声が柔らかくて耳に気持ちがいいからか、ようやく俺の瞼が下がり始めてきた。


「彼女を好きに…なっては………ダメなん…です。」


カウンターに突っ伏して、完全に降りた瞼の外側で優しい声が響いている。


「何故です?」


「………大事だから………。」


「大事なら傍に置いて、大切に守ればいいじゃないですか。」


「大事な………人は………いらない。」


「どうして?」


「無くした時………辛い…から………。辛くて…死にそうになる………。」


「あなたが諦めなければ、何も無くなりません。もう少し頑張ってみては?」


「………そんなの………嘘だ………。誰も、俺を…本当に………必要としない………。だから、令子も………要らないって………言ったんだ……。」


夢現の中、瞳から熱いものが伝った気がした。

また、嫌な夢を見てるのかも知れない。

それなら、直ぐまた目が覚めるはずたから、暫くの辛抱だ。

そう自分に言い聞かせて、俺は暗闇の中に堕ちていった。


「フゥー………本当に強情な人だ。これは、助っ人を呼ばないと無理ですね。」



< 155 / 299 >

この作品をシェア

pagetop