Pathological love
「どうして眠れないか、自分で分かりますか?」
一瞬、彼女の顔が頭に過るけれど、俺は直ぐに掻き消した。
「いえ、分かりません。」
「秋山さん、あなたは今、嘘をつきましたね?原因は私に言われて、さっき頭に浮かんだ人の事ですよ。」
「彼女とは、そうゆうんじゃ無いんです。」
「どうしてそう………思うんですか?」
空きっ腹に酒が今頃効いてきたのか、黒木さんの声が柔らかくて耳に気持ちがいいからか、ようやく俺の瞼が下がり始めてきた。
「彼女を好きに…なっては………ダメなん…です。」
カウンターに突っ伏して、完全に降りた瞼の外側で優しい声が響いている。
「何故です?」
「………大事だから………。」
「大事なら傍に置いて、大切に守ればいいじゃないですか。」
「大事な………人は………いらない。」
「どうして?」
「無くした時………辛い…から………。辛くて…死にそうになる………。」
「あなたが諦めなければ、何も無くなりません。もう少し頑張ってみては?」
「………そんなの………嘘だ………。誰も、俺を…本当に………必要としない………。だから、令子も………要らないって………言ったんだ……。」
夢現の中、瞳から熱いものが伝った気がした。
また、嫌な夢を見てるのかも知れない。
それなら、直ぐまた目が覚めるはずたから、暫くの辛抱だ。
そう自分に言い聞かせて、俺は暗闇の中に堕ちていった。
「フゥー………本当に強情な人だ。これは、助っ人を呼ばないと無理ですね。」