Pathological love

Alternativeに着くと、既にcloseの看板がドアに掛けてあって、小さな明かりだけが灯っていた。

そっと中に入って進むと、途中でスーツをビシッと着こなした優しそうな紳士が立っていた。

隣にはオーナーの綾野さんも居る。


「今晩は…。あの、ご迷惑をお掛けしてすいません。」


「いいえ…大丈夫ですよ。うちの店に来る前にも大分飲んで来られた様です。受け答えがしっかりされていたので、気づくのが遅れてしまいました。申し訳ありません。」


「いいえ!そんな事気にしないでください!飲みすぎた方が悪いんですから。あの、さっき電話頂いたのは、あなたですか?」


オーナーから向き直って、隣の紳士に目を向けると、ニッコリ笑って会釈をされた。


「黒木と申します。ここのバーの常連で、秋山さんともここで知り合いました。ご婚約おめでとうございます。秋山さんから伺っております。」


「いえ…ありがとうございます。全然彼の役に立ってないんですけど、一応婚約者です。」


「そうですか………どんな方かと思って楽しみにしていたんです。あなたの様な方なら、秋山さんには理想的です。後はこの強情な人をどう懐柔するかですね?頑張ってくださいね。」


唐突に話されて、言っている事がよく理解出来なかったけれど、とにかく最後の“頑張ってくださいね”とゆう言葉には同意した。


「はい………。」


「それでは、私はこれで………ああ、そうだ。宜しければ私の名刺をお渡しします。困った時に助けになりますから。」


彼は、使い込まれた革のカードケースから、シンプルな名刺を取り出し、私に差し出した。

活版印刷された名刺は、上質な紙に印刷されていて、最近では中々見ない上等な物だった。




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