Pathological love
私は焼き立てのアップルパイを持って、インターホンを押した。
垣根の間から玄関を見ていると、案の定奏也さんが出てきた。
「いらっしゃい…令子さん。」
「お忙しいところお邪魔しちゃって、すいません!」
「いいえ、俺も京子さんもあなたが来てくれるのをずっと待っていました。」
奏也さんは、微かに笑みを浮かべて私を見ていた。
「遅くなってしまって、すいません………。」
「いいえ………人の心ですから、早いも遅いもありません。………さぁ、中へどうぞ。」
「はい。」
着流し姿の奏也さんに導かれて、この古民家に入って行くと、いつも思うが本当に不思議な気持ちになる。
まるで不思議の国のアリス状態。
現実離れすることによって、きっと京子さんの作品の独創性は磨かれているんだとつくづく思った。
「令子ちゃ~ん!!待ってたわよ~!!来てくれて嬉しいわ!!」
大袈裟に抱きつきながら京子さんは私を迎えてくれた。
「これ、京子さんの好きな店のアップルパイです。良かったら………」
「キャー!!!嬉しい!!!今、買い置きのスイーツ食べ尽くしたところなのよ!奏也!今すぐ出して!」
「………はい。」
奏也さんは呆れ顔で、京子さんから紙袋を受け取ると、キッチンへと下がっていった。
「さぁ、令子ちゃん座って!早くあなたの覚悟の程を聞きたいわ。」
京子さんは、見透かしたように私を見ると、ニコッと笑った。