Pathological love
「はい?作戦って何でしょうか………?」
京子さんは私の様子を見て、大袈裟に溜め息をついて見せると、私の隣に移動してあぐらをかいた。
「はぁ~…令子ちゃん……全然分かってないわねぇ。あの子が正攻法で落ちると思う?答えはNOよ!私は教授時代に散々あの子の女関係見てきたけど、相当根深いわよ。彼女とイチャついてる所を見た時はゾッとしたわよ。女の方は完全に夢中で好き好きオーラを放ってるんだけど、その彼女を抱き締めて、甘い言葉を吐いているあの子は、恐ろしいくらい冷静で冷めた目をしてたわ。」
「あぁ…………私も一度だけ見た事があります。彼を追い掛けてクラブに行った時に………。確かに女性とはかなりの温度差がありました。」
「やだ………見ちゃったの?私もこんな性格でしょ?だから、何度か注意したのよ。でも、あの子は、軽く受け流して全く取合ってくれなかった。」
京子さんは降参とばかりに、両手を挙げた。
「ですよね~………………。」
「確かに今まではそうかも知れません。でも何故か令子さんを見る目は優しいのは確かです。少しずつ心を開いているのかも知れません。」
「あぁーー……どうしたらいいのよ~!!ああ見えて結構繊細だから、接し方が難しいわ~…!」
京子さんは悶えながら、やけ食いとばかりにアップルパイを大きくかじった。
「…接し方………。」
「ん?何か言った?令子ちゃん。」
「私、良い考えが浮かびました!!ちょっと行ってきます!!上手く行ったら報告しますね。」
「えっ?!令子ちゃん?」
京子さんの事務所を出るなり、私はカードホルダーに入っている一枚の名刺を取り出した。
「…………もしもし…水川 令子です。私を覚えていますか?…………………はい、個人的な事で少しお時間を頂けないでしょうか。」
きっとこの人なら何か方法を知っている筈。
私は一縷の望みをかけてある場所に向かった。