Pathological love
「よくいらっしゃいました。お待ちしてました。さぁ、こちらへお座り下さい。」
自ら扉を開けて出迎えてくれたのは、黒木さん本人だった。
今日は土曜日とあって、仕事だったのか白衣を着ている。
白衣姿もよく似合っていて、整理された部屋と皺一つ無い様は、彼を少し潔癖なんじゃないかと思わせた。
「白金くん、お茶をお願いします。」
スマートな動きで内線で伝言すると、返答を聞いてから、私の向かいのソファーに座った。
「彼女の用意してくれるお茶は、とても美味しいんです。」
優しく微笑まれると、少し緊張していた気持ちが和らいだ気がした。
「急に連絡してしまって、すいません。今日も診察があったんですよね?」
「ええ、まぁ、午前中だけですから大丈夫ですよ。」
「入り口の扉に結婚相談所って書いてあったんですけど………どうゆう事ですか?黒木さんは医師ですよね?」
「ええ、そうですよ。本業は医師ですが、ご希望があればお見合い相手も斡旋しているんですよ。最初はうちの患者さんに頼まれたのが切っ掛けなんですけど、紆余曲折ありまして…。」
「そうなんですか………。」
トントン………
「失礼します。」
髪の毛をキチッと纏めた綺麗な女性がお茶を運んできた。
丁寧に私へお茶を促すと、一礼して下がっていった。
きっと彼女が白金くんなのだろう、今時の若い女の子とは違って薄化粧で控え目な印象だけれど、その分素材の良さが伺える。
薄い黄色のお茶は何処かで嗅いだ事のある匂いで、とても興味が惹かれた。