Pathological love
「私達は紹介で出会ったんです。だから…そのまだ今一つ壁があると言いますか…もう少し、深く信頼関係を築きたいんです。なので、どうしたら彼の気持ちを私だけに向けることが出来るでしょうか?」
「婚約をしているんですから、焦らなくてもいいと思いますが。」
「そうなんですけど………そうじゃないと言うか………。」
いまいち煮え切らない私の言動に、黒木さんはハーブティーを飲みながら一息つくと、ソーサーをゆっくりとテーブルに置いた。
「水川さん………本当に相談する気があるのなら、隠し事はいけませんね。そうなると、その程度のアドバイスしか出来ませんよ?」
確かにその通りだ。
都合の良い事ばかり言って、問題を隠していては、的確なアドバイスは貰えなくて当然の話だ。
「黒木さんは、秋山さんの知り合いと言っていましたが、彼の何処までを知っているんですか?」
「私はAlternativeでの秋山さんしか知りません。」
「そう………ですか。」
膝の上で握っていた自分の手を見つめながら、私は暫くどうするか迷っていた。
「無理しなくてもいいんですよ………人の心は傷つきやすい。」
「リスクを負わないと、何も得られない事は、営業のトップを走っていて重々承知だった筈なのに情けないです。」
意を決して顔を上げると、黒木さんは待っていた様に優しく微笑んだ。
「私、患者として此処へ通います。だから、全て………聞いて貰えますか。」
黒木さんは私の決断に少し驚いた顔をしたけれど、直ぐに満足そうに笑って答えた。
「はい。それなら医者として、守秘義務を守ります。」