Pathological love
家に帰ってきてから、私はずっと黒木先生のアドバイスの数々を反芻していた。
「とにかく飾らない自分で、なるべく彼と一緒に居る事………そうすれば自ずと他の女性には会う機会が減るはず…か。よしっ!!」
気を取り直して、私は早速ベランダ伝いに連理の部屋に向かった。
「………来たのか……遅かったな。」
私の姿を見つけて、連理は少しよそよそしく私に話し掛けてきた。
あんな事があってまだ間もない、当たり前の反応だ。
酔って一緒に寝た翌朝は、お互い頭が冷えていて、なんとなく仲直りする形になった。
拒絶されるかと思っていたから、彼の謝罪の言葉は嬉しい誤算だった。
「ごめん……遅くー」
“挨拶とお礼の言葉は魔法の言葉です。恥ずかしがらずに声に出してください。”
頭の中に先生の言葉がリフレインする。
「どうした?」
「………ただいま。」
「………あぁ…。」
連理は直ぐに背を向けてキッチンに向かってしまった。
連理のそっけない言葉に少しがっかりして、気まずいまま後を追うと、ある部分が目に留まった。
彼が嬉しい時に反応する真っ赤な耳。
「フフッ………。」
「何笑ってんの?」
調味料を片手で持ちながら横目でチラッと私を確認する彼は、やっぱり頬と耳が真っ赤になっていた。
「あれ~?何で顔と耳、赤くなってんの~?」
「べっ別に!………いっ今、料理中だから熱いんだよ!!何勘ぐってんの?」