Pathological love
個人事務所のデスク。
俺はいそいそと帰り支度をしていた。
「お疲れ!秋山…もう、帰るのか?」
声を掛けてきたのは、俺の右腕、唯一の営業の仲井 慎哉(なかい しんや)だった。
出先から戻って来たばかりの様で、手にはまだバックを持っていた。
「ああ、帰りに買い物してくから。」
「たまには俺に付き合えよ。この後どう?」
今日、令子は友達の所に行っているから、特に用事は無い。
ここの所、外に飲みに行かない状態が続いていた。
何故ならここ最近、毎日の様に令子は家に来るし、そのまま眠ったりする。
彼女の世話が大変でそんな気分にも全くなる事が無かったからだ。
何よりも彼女との時間がとても充実していて、リラックス出来ている。
特に最近の令子は妙に優しくて、笑顔を絶やさない。
俺の心は何かに包まれたように穏やかで、信じられないくらいの落ち着き様だ。
(令子と本当に夫婦になったら、こんな毎日が送れるのか………?)
「おいっ!秋山?!聞いてるのか?」
「えっ?ああ、聞いてるよ。」
「で、どうする?」
訝しげな仲井の視線を受けて、慌てて返事をした。
「行くよ………。」
たまには外で食べるのもいいかも知れない。
明日の献立のいいヒントになる。
俺は無意識に、新しい手料理のレシピを考えていた。