Pathological love
「いいって別に………。」
恥ずかしそうに周りを見回すと、人が少ないのを確認して、そっと私の隣に並んだ。
「何よ………自分だって、撮りたかったくせに………。」
「何か言ったか?」
横目で睨み付けながら口答えするから、私はわざとシャッターを押した。
「おいっ!!俺ちゃんとしてなかったのに!!もっかい撮れ!!」
「やだぁ!離してってば!!」
「うるさい!!自分だけカメラ目線でキメて、ずりぃーぞ!!」
「あはははっ!分かった、分かったから!!もう一回一緒に撮ろ!」
私達は年甲斐もなくはしゃいでいた。
連理と居ると何処に居ても、何をしていても心が浮き立つ。
午後から来ていた私達は夕方から切り替わるナイトショーまで観て行く事にした。
この水族館では、6時以降は館内の明かりが消されて、水槽の明かりだけが館内を照らす仕組みになっていた。
昼間と違って幻想的な水槽は、ずっと見ていると吸い込まれそうで、それでも私達は見ずにはいられなかった。
「静かで………綺麗だな。」
連理が水槽の上の方を眺めながら、独り言の様に小さな声で話した。
「うん。子供達がいない分、余計、静かに感じるね。」
「魚はいい………何も考えず、静かな水の中でずっと気持ちよく泳いでいられる。」
「確かに気持ち良さそうだけど、私には皆、独りぼっちに見える。」
「生き物は皆、独りぼっちだろ?」
近くに寄ってきた魚に、コンコンと指を鳴らすけれど、見向きもせず、そのまま行ってしまった。
彼は私の方を見て、“ほらね”とばかりに、小さく笑って見せた。
途端に私の胸はぎゅっと苦しくなる。
「そうね。………独りぼっちを好む人はいるけど、死ぬまで独りでいたい人はいないわ。」