Pathological love
「令子さん…そろそろ着きますよ。」
「ん…。」
美保ちゃんに肩を叩かれて、私は、意識を仕事に戻す。
エレベーターの階数表示が10Fで点滅して扉が開くと、直ぐに担当の人が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました!此方へどうぞ。」
仕事がら、女性が多いフロアはとても綺麗で、いい匂いがした。
印刷業のうちとは全く違って、雲泥の差だ。
うちはもっと殺伐としていて、綺麗やリラックスよりも、仕事効率優先のオフィスで、そんなに綺麗じゃない。
デザイン部と秘書課は例外だけれども………。
案内された先のドアの前に立つと案内役の女性がノックをする。
「間宮印刷の水川様がいらっしゃいました。」
「どうぞ。」
「失礼します!!」
通された応接室の中もとてもクリーンな内装になっていた。
加湿器も常設されていて、肌に徹底している所がさすが化粧品会社だけある。
「初めまして、今回のモニターイベントを担当する加藤です!宜しくお願いします!」
「初めまして、水川です。宜しくお願いします!それから、部下の永井です。こちらのイベント関連の担当は私達なので、何かありましたら直接私達にご相談ください。」
切れ長の目が特徴の加藤さんは、そう言うと後ろを振り向いた。
「美鈴さん此方へ…。」
加藤さんの後ろから顔を出したのは何処かで見覚えのある顔。
(ん?………何処かで………)
「あなたは………」
『あっ!』
私達は同時に声を上げていた。