Pathological love
「もしかして、クリスタルホテルでお会いした方ですか?」
通りで見覚えがあると思ったら、クリスタルホテルで一悶着あったあの時、連理と一緒にいた若い女性だった。
ここで認めたら、その後の仕事がしにくい事は百も承知だが、誤魔化して後でバレた時の方が恐ろしい。
「あの時は失礼しました。」
「いいえ……気にしてないですから。私は新嶋 美鈴です。初めて父の仕事をお手伝いする事になったので宜しくお願いします!」
彼女はお嬢様らしく、上品に笑った。
大学生の割りに落ち着いていて、育ちの良さが窺える。
「お二人ともお知り合いなんて、縁がありますね!それでは続きは此方で。」
事情を知らない加藤さんには、ニッコリ笑ってソファーに促され、私は気まずい思いのまま初めての打ち合わせをする事になった。
初回はとにかくどういったイベントがいいか皆で意見を出しあって、一旦持ち帰ってそれぞれブラッシュアップするとゆう事で終った。
「あぁ~!結構かかりましたね…お腹減ったぁ~。」
美保ちゃんがお腹を押さえながら私を見た。
「ごめん美保ちゃん………彼がご飯作って待ってるから。」
「そんな幸せそうな顔で言われたら諦めるしか無いですね。でも、また皆で飲む約束は守ってくださいよ~?」
「分かってる、ごめんね。」
いつも聞き分けのいい部下で本当に助かる。
美保ちゃんはよく人を見ているから、周りが見えていて気が利く。
若いのに貴重なタイプだ。
歳を重ねたら、きっとトップも狙える位置につくだろう。