Pathological love
「うん………ごめん。」
男の人の少し固い指が私の唇をゆっくりとなぞった。
それと同時に私の目線は彼の目に移る。
一重の目を少し伏せて、心配そうに私の口許を見る連理は、凄く悩ましげで私の欲望を駆り立てた。
「明日になってみないと分からないけど、唇は少し赤いくらいで済みそうだ。口の中は暫く痛むかも………。」
ドクンッドクンッと私に響く振動は、頭を麻痺させて何も考えさせない。
それならたまには本能に従ってみようか………。
記憶にある彼の唇の感触を思い出しながら、私は名前を呼んだ。
「連理………。」
思惑通り彼の瞳が私を捉える。
「口の中の氷………溶けちゃった………もう一つちょうだい?」
「ああ………。」
連理がグラスからまた一つ氷を掬い上げて指に持つと、私は空かさずその氷を取り上げた。
彼は驚きもせず私の口許を見ている。
「連理………口開けて?」
「あぁ?何で?」
私は隙を見て氷を彼の口に放り込んだ。
「何なんだよ?!俺は要らないって!」
「そんなの分かってるよ……氷が欲しいのは私。だから………その氷………頂戴?」
意味が分かったのか、一瞬目を見開くと連理は口の中の氷をカロンッと転がした。
「この氷が欲しいのか?」
「うん………その氷なら早く治るかも知れない。」