Pathological love
途中、隣を遮っていた壁が壊されて無惨な状態になっているのが目に入った。
「ちょっと!!壁っ!!」
急にドサッと床に落とされる。
「いった~………。」
ずれたメガネを上げて、落とした主を睨み上げる。
レンズに映った人は、以外にも若い男だった。
長く緩いウェーブがかった前髪が目を隠していて、顔ははっきりしないが、服装もお洒落で明らかに今時の大学生の雰囲気だ。
「人に文句言える立場か?よく見てみろよ。あんたん家、火事になるところだろっ!」
「えっ?!」
ベランダに飛び出て自分の部屋を確認に行くとリビングは水浸しになっていた。
おまけにお気に入りの焼き鳥焼き機も黒く焦げていて、変わり果てた姿になっている。
「私の………部屋………私の………焼き鳥…………。」
「全く人騒がせな………煙はベランダから流れて火災報知器は鳴らなかったみたいだから安心しな。………………引っ越し早々、火事に巻き込まれるなんて最悪。」
無惨な自分の部屋を眺めながら呆けていると、斜め頭上から声が降ってきた。
座っている時は気づかなかったけど、かなりの長身だ。
ヒールを履いていないと155㎝しかない私にとってはかなりの迫力。
自分の不甲斐なさに返す言葉も見つからない。
「………………すいません。」
「…………………………まったく二度も面倒かけんなよ。」
「二度って………?」
隣人の男は溜め息を吐きながら腕を組んだ。