Pathological love
躊躇することもなく俺の前に座ると、少し控え目にうつ向いていた顔を真っ直ぐに上げた。
(やっぱりこの顔………見覚えがある。)
ほんの数%あの時の女じゃない事を期待していたが、そう甘くは無かった。
あの時俺は、彼女をたんにゲーム感覚で誘い、挙げ句にホテルで他の女を追い掛けて放置した。
普通は恨まれても仕方無いと思っていたけれど、目の前の彼女はそんな事を微塵も感じさせない様子で、笑顔を見せている。
(この女………一体何を考えている?)
「どうだね秋山くん!うちの娘なんだが、君の作品を偉く気に入っていてね。君自身にも興味があるそうなんだが、うちの娘と付き合ってくれないか?君はまだ結婚してないから丁度いいだろ?いずれ上手くいって結婚となれば、うちの繋がりのある企業に君を使って貰えるように頼んでやれるぞ!」
「すいー」
当然の様に断りの言葉を返そうとした瞬間、テーブルの下で仲井に腕を掴まれた。
驚いて視線を向けると、目の端が小さく動いた。
邪魔をするなとばかりに振り切って話そうとした時、新嶋社長が話を続けた。
「うちはファッション関係と繋がりも多くてな、ファッションブランドのBIJOUを知っているか?最近、コラボ商品を企画する案が出ているんだ。来年になるが、今回のプロジェクトが成功すれば、君に広告デザインを任せてもいいと思っているんだ。」
「BIJOU…………。」