Pathological love
「まぁ、基本のメイクにはこのくらいはかかるよ。」
「うわ~面倒臭っ!!」
「取り敢えず……今日はファンデーションだけでも塗ってみよっ!」
目を爛々と輝かせて彼女は近寄ってくる。
「うぇ~………。」
「行き詰まってるんでしょ?仕事の為でしょ?」
「………はい。」
「今、男の人でも、ファンデーション塗っている人いるんだよ?可笑しくないから!」
彼女のヘアピンで前髪を留められると、俺は、漸く覚悟を決めた。
「最初は下地を塗りますよ~…。」
少し冷たいクリームが彼女の指から俺の肌に塗られる。
少しくすぐったくて気になるけれど我慢する。
「連理って肌綺麗だよね?何かしてるの?」
「別に………。」
「え~!!不公平。私は毎日スキンケア頑張ってるのにぃ~…。」
「強いて言うならバランスの取れた食事じゃね?」
「あぁ、確かに!外からよりも内側からの方が栄養は吸収されるからねぇ~。」
「令子も最近、肌の調子いいと思うけど?」
「本当っ!やった!!」
「あぁ、俺の食事のお陰か…。」
「ドウモアリガトウゴザイマシタ。」
「うわっ!全く心が込もってねぇ!」
「アハハッ!バレた?」
こんな他愛もない会話も令子とすると、フワフワ俺の心が浮き立つ。
ファンデーションを塗られながら、そんな彼女の綺麗な顔の造形を盗み見る。