Pathological love
15. mother
小春日和の暖かい日、私は久し振りに黒木病院に診察に来ていた。
最近は落ち着いた日々が続いていたので、月一程度に予約を入れて近況を話す程度で、診察と言うかお茶会みたいな雰囲気になっている。
「そうですか!順調そうですね?水川さんの顔も随分と優しくなってきましたし、すっかり母性が滲み出ている様ですね。」
「そう見えます?母性なのかは分かりませんけど、何故か彼を見ると守らなきゃ、助けなきゃと思ってしまうんです。」
「素敵な事じゃないですか!」
「先生………ずっと聞きたかった事が実はあるんです。」
私の神妙な声のトーンに、黒木先生はソファーの背もたれから体を離して背筋を整えた。
「何でしょう?」
「私の母は夫に浮気をされて、私が幼少期の頃に離婚しました。それ以来、母にはずっと男の人を信じるな、頼るな、結婚はしなくてもいいと言われ続けて来ました。知らなかったとは言え私は以前上司と不倫をしてしまいました。手痛い失恋をしてからとゆうもの、私はずっと自分の選んだ男性に自信が持てなくなってしまったんです。こんな私が、これから彼の事を支えて行けるのでしょうか?………本当は凄く不安なんです………。」
俯いた視線の外から、クスッと軽やかな笑い声が聞こえてきた。
「そんな事を、今更心配していたんですか?」
「えっ?」
「秋山さんを選んだ時点で、あなたはもう今までの自分の考えとは違う道を歩き始めてるじゃないですか。」