Pathological love
「あ…あの、もう少し先にカフェスペースがあるんです。そこで面会の予定ですので待っていてもらえますか?」
「はい。分かりました。」
令子さんにカフェの椅子を進めると、私はセッティングに取り掛かった。
時折令子さんと、仕事の話や他愛もない事を喋ったりしているうちに、随分と打ち解ける事が出来た。
どうやら今日は、勇気を出して婚約者の話をするそうで、きっと反対されると思うけど頑張ると彼女は少し不安そうに答えてくれた。
私は在り来たりな事しか言えなかったけれど、心からの上手く行く事を祈った。
「お久し振りね令子ちゃん。」
外邑さんが、八重子さんの車椅子を押してカフェのオープンスペースに入ってきた。
「外邑さん…ご無沙汰しています。」
「お母さん、今日は調子がいいのよ。短い間なら受け答えが出来ると思うから。私達はあっちに控えてるから何か用の時は呼んでね。」
「ありがとうございます。いつもすいません。」
「何言ってるの!さぁ、優ちゃん私達はこっちに行きましょう。」
少し離れたカフェのカウンター内で、私達はお茶の準備を始めた。
お茶を出した後、遠くから二人を見守っていたけれど、一生懸命話し掛ける令子さんに対して八重子さんは黙ったままで、話が終わって令子さんが立ち上がるまで、お互い笑顔になることは無かった。
車椅子を押して私達の所にくる頃には、令子さんの表情は明らかに落ち込んだものとなっていた。