Pathological love
令子さんが帰った後、私は外邑さんと二人でカフェの片付けをしていた。
「外邑さん………なんか令子さん可哀想でした。どうして八重子さんは娘さんにあんなに厳しいんでしょうか?」
「………そうね…どうしてかしらね。大事だからこそ厳しくなってしまうのかも知れないわね。本人にしか分からない事よ。でも、一つだけ確かな事があるわ。八重子さんは娘の幸せだけを願っている。」
「………。」
私はどうしても納得がいかなかった。
八重子さんはどうして娘に歩み寄ろうとしないのか。
折角会って話す事が出来るのに、残された時間を令子さんと笑って過ごして欲しい。
私は見たこともない八重子さんの笑顔を想像して、思いを馳せた。
「患者さんの意思に寄り添うのが私達の仕事なんだから、片方に肩入れして見てはダメよ?」
図星を突かれた様で私は恥ずかしくなって俯いた。
「………すいません。」
「また近いうちに来るそうだから、少しずつね……?」
「………はい。」
今度令子さんが面会に来るまでに、少しでも八重子さん気持ちを理解しておきたい。
お互いを思っているならきっと上手く行くはず、私は自分にそう言い聞かせて、八重子さんの病室へと向かった。