Pathological love
「えっ…?」
咄嗟に自分のお腹を抑えるけれど、無常にも腹の虫は鳴り続ける。
「プッ…あははははっ!!!何?お姉さん腹減ってんの?すっげぇ腹の音!!…ククッ………」
あまりの恥ずかしさに、口をぱくぱくするばかりで言葉にならない。
顔も沸騰したかの様に一気に熱を持って、間違いなく真っ赤になってるだろう。
(もぅーー………なんでこんな時に鳴るのよ!!最悪!格好つかないじゃない!!)
逃げ出す様にベランダに一歩踏み出すと、男の声が呼び止めた。
「待ってよ。晩飯食べてないんだろ?家で食べてけば?」
「えっ?」
「俺ん家今日、鍋。」
「………あなた料理出来るの?」
「…あぁ、昔から両親が共働きだったから。外食飽きて自分で作るようになった。」
チラリとテーブルの方を覗くと、土鍋がグツグツ音を立てていた。
同時にいい匂いも漂っている。
私のお腹の虫も、きっとこの香りにやられたのだろう。
(ここで料理に釣られるのは非常に恥ずかしい………)
「隣人の誼で…どーぞ?」
男はさっきとは打って変わった様に、ダイニングテーブルの椅子を引いて私を促している。
(恥ずかしいけど………まぁ、そこまで言うなら………)
「…………………それじゃあ………お言葉に甘えて。」
「プッ…食べんのかよっ!」
「何よ!自分で誘っておいてっ!!」
「ウソウソ!!さぁ、どうぞ。」
一体どうゆうつもりなのか男の行動を推し量ってみるが、男は何も気にすることなく、鍋を取り分け始めた。