Pathological love
「こんばんは………綾野くん。今日は来てるかい?」
「いいえ。残念ながら最近は仕事がお忙しいようで………。」
「そうか………残念だね。」
「何時もので宜しいですか?」
「ええ。」
仕事帰りにAlternativeに寄るのが最近の日課になりつつある。
カウンターの椅子に腰掛けながら、入口の方に目をやった。
「そんなに待ち侘びているなんて、まるで恋しい想い人の様ですね?」
「フフッ………病的な職業病みたいなものですよ。彼を見ていると、とてももどかしくて放って置けなくて………綾野くんにも性別関係なくそんな相手は居ませんか?」
「………ええ。私にも思い当たります。…………お待たせしましたマティーニです。」
「ありがとう。」
「黒木さん。一つ聞いてもいいですか?」
「何でしょう?」
綾野は顔に掛かった少し長い前髪を耳に掛けながら、顔を寄せて来た。
近くで見れば見る程、まるで女性の様な美しさを放つ。
それが実際は男となると余計不思議な魅力が溢れていた。
きっと綾野目当ての客もたくさんいるのだろう。
どおりで一人で飲みに来る客が男女問わず多いわけだ。
「病的な愛について………。」
綾野は意味深な眼差しで、ナッツ類の入ったボールをマティーニの側へコトンと置いた。