Pathological love
「随分と意味深な表現ですね?」
「ええ………私の事ですから。」
プライベートを隠すこと無く、綾野が答えた。
「あなたはミステリアスな外見とは別に正直な人なんですね?普通人は自分のプライベートな部分は隠すものです。」
「フフッ…確かにそうだと思います………私だって同じです。でも、どう足掻いたって、プロの目は誤魔化せない………そうでしょう…先生?」
まるで、誘う様に少し目を細めて微笑んだ顔は抜け目がない。
「さっきの言葉は訂正します。あなたは賢い人だ。」
「黒木先生………最近私を酷く煩わせる人がいるんです。態度はとても分かりやすく、私に対して好意を持っているのは明らかなんですが、わざと私の前で他の人と仲良くして見せたりするんです。一体どういうつもりなのでしょうか?私はまだ、気になる程度なんですけど、この先どうしようか迷っていて。単に嫉妬させる為の行為なんでしょうか?」
「なるほど………考えられる事は恐らく二つでしょう。一つは、綾野さんの言う通りであなたを嫉妬させて気を引く為の行為。」
「フフッ………やっぱりそうだったんだ。」
綾野は満更でもないような顔で、笑っている。
案外脈ありなのかも知れない。
「それからもう一つ、こちらはとても厄介なのですが、あなたに惹かれていても、何らかの理由で踏み出せず、自分には無理だと諦めている場合。本人は諦めているつもりでも、満たされない心は誰かと繋がりを求めて手当たり次第関係をもってしまう。こればかりは周りが正論を言っても聞く耳持ちませんから、自分で気づくしかない。」