Pathological love
連理は相変わらず白精堂の仕事で忙しく、たまに家に帰ってきてもすぐ仕事場にトンボ返りで殆んどゆっくり話す事も出来ないでいた。
間宮印刷にも今は事務所から代わりの人が来て業務をこなしていた。
「帰ってくる宛もないし、やっぱり事務所に行ってみるか………。」
向かう途中のデパ地下で軽くお総菜を買って、お祝いの日のお決まりのワインを買う。
恐らく彼は私の昇進を知らないだろうから驚くだろう。
そんな事を考えながら逸る気持ちを抑えられなかった。
「後は忘れ物は無いかな?」
買い物袋をチェックして携帯を何気に見た時だった。
メールが一件入っている事に気づく。
「うそっ!連理から………」
“夕御飯準備してるから早く帰って来い。”
久し振りの彼からの夕飯のお誘いに、私の心はドキドキと一気に騒がしくなった。
急いで自宅まで帰ると、買ってきた惣菜は冷蔵庫に仕舞ってワインの袋だけ手に持った。
せっかくの連理の手料理があるのに、他の料理で食べられなくなるのが嫌だったのだ。
そっと覗くようにベランダ伝いに隣に入ると中は真っ暗。
「あれ?私………早く着き過ぎた?」
パァンッ!!
「わぁっ!!?」
「昇進おめでとうっ!!水川課長!!」
クラッカーの音と共に急に明かりが点くと、部屋中がまるで誰かの誕生日の様にキラキラと飾り立てられていた。
風船まで浮かんでいる。
「えっ!何これ?知ってたの?」