Pathological love
「令子…何で泣くんだ?嬉しくない?」
「違うの………嬉しくて………嬉しくて泣いているの!」
「そうか………良かった。初めて人にこんな事したから、間違ったかと思ったよ………良かった。」
連理はティッシュボックスを持って来ると、立ち尽くして泣いている私を椅子に座らせ涙を拭ってくれた。
「うわぁ…不細工になってるぞ………化粧も落ちて来た。」
「うるさいっ……うぅ……。」
「さぁ、早く鼻もかんでスッキリしろ。鼻が詰まってちゃ俺のフルコースが不味くなるだろ?」
「フフッ…そうね。」
私達は顔を見合わせて笑うと、漸くお祝いの席に着いた。
久し振りの彼の手料理は、ほっぺが落ちるほど美味しいものばかりで、私は箸が止まらずお腹いっぱい食べてしまった。
「あぁ~………苦しぃ~…ヤバい。」
「そんなになるまで食うなって………お前には呆れるよ。」
「だってどれも極旨だったんだもん!仕方無いでしょ?美味しい料理を作る人にも責任はあるのよ!」
「はい…はい……すいませんでした。」
連理が私の責任転嫁を聞き流しながら、食洗機をセットしている。
私はソファーを抜け出すと、こっそりバックに忍ばせていたペアリングを手に隠して彼の後ろに立った。
「………話があるの。」
ピクリと反応した彼はゆっくりと振り返ると、意外な程真剣な顔をしていた。
「俺もあるんだ。」
「何?お先にどうぞ!私の方が長くなると思うし。」
彼は何の躊躇いもなく、その言葉を口にした。
「俺達………婚約を解消しよう。」