Pathological love
「おい!令子!白精堂の令嬢と秋山さんが婚約って、一体どうゆう事だよ!!」
「藤森!!少し落ち着きなって………!会社で上司にその口調は有り得ないって………!」
会社に出勤して直ぐに藤森と花枝が、休憩室に飛び込んできた。
連理と別れてから一ヶ月が経っていた。
私はすっかりやめていた筈の煙草をまた口に預けている。
「婚約解消したの………ただそれだけよ。」
「はぁ?それだけって、解消したことは百歩譲ってそうゆう事もあるだろうと理解できるけど、何で解消して直ぐに秋山さんが別の女と婚約するって話になるわけ?これじゃあまるでー」
「藤森………悪いけど、これが私達なの。利害が一致して一緒に居ただけ。今より好条件があればそちらを取るのが当たり前でしょ?普通のカップルの様に、恋愛して婚約したわけじゃないし、相手を縛ることは出来ない。お互いの役に立てる間だけの都合のいい相手だったのよ。」
「令子…………。」
「フフッ………でも、誤算だったのは本当に彼を好きになってしまった事かな。」
今までだったら、こんな自分の気持ちを他人に晒け出す事なんて死んでも嫌だった筈なのに、何かが自分の中で変わったのを感じていた。
「じゃあ引き止めたりだとか、なんでもいいからしてみろよっ!!格好悪くたっていいじゃないかっ!!」
「………これ以上彼を追い詰めたくないから、このままでいい。」
「何だよそれ………ふざけんなよ………。」
藤森は肩を落として椅子に座り込んだ。
掛ける言葉が見つからなくて苛立っているのが分かる。
「私も最初、彼を利用した事には違いないから……きっと罰が当たったのね。」
「そんな事………。」
花枝も反論しようと口を開いたけれど、何も言葉が出てこなかった。
私はこれからどうしたらいいのか、全く分らなかった。
毎日色のないくすんだ世界で、独り息をしているだけで、時だけが無駄に過ぎていった。