Pathological love
一時の沈黙の後、秋山が口を開いた。
「………………俺が自分で決めた事だ。お前とは関係ない。」
「自分で決めた事?…………じゃあ、何でそんな顔してんだよ?」
少し逆撫でし過ぎたかと思った瞬間、勢いよくファイルが床に叩きつけられた。
「気が散る………出てけ。」
「ご………ごめんっ!!」
慌てて部屋を後にすると、俺は近くのソファーに逃げ込んだ。
「はぁ~…怖かった~………どうしたらいいんだよ。」
「お疲れ~仲井も今、休憩?」
気の抜けた声が響いたと思ったら、同僚の美島 美咲(みしま みさき)だった。
名前の通りの美人で、狙っている同僚も多いが誰も近づき難い高嶺の花だ。
それは勿論俺も同じで、目の保養程度に毎日見ている。
「おお~…お疲れ~。」
「何?凄い疲れてるみたいだね?大丈夫?」
少しかがみ込んで俺を覗く仕草をするその胸元につい目が行ってしまう。
「あっ秋山がっ!機嫌悪いからっ!!」
「あ~あ………成る程ね。何時ものスランプタイフーン?でも、大変なのは過ぎ去るまででしょ?」
「それだけじゃ無いんだよ今回は。」
「もしかして、婚約の件?」
「………………。」
営業成績も飛び抜けてるだけあって、さすが察しがいい。
「それこそ何時もの事じゃない?今まで婚約までしなかったけど、いい物件にはちょっかいだして来たんだから。今回もいい物件見つけたから乗り換えただけでしょ?私には理解できないけど、秋山はそれが普通でしょ?相手も納得して、円満に終わったみたいだし。」