Pathological love
何処からか私を呼ぶ声が聞こえてきて、私は無意識に、それは当たり前の様に、その声の方に手を伸ばした。
「こんな所で眠るなんて………。」
夢と現実の狭間でゆらゆら微睡んでいると、また声が聞こえた。
何時もの呆れた様な懐かしい彼のセリフ。
「眠いから………ベットに連れてって………」
伸ばした手は、固くしっかりした腕に支えられて、いつの間にか彼の胸に頬を寄せていた。
(………やっと、私の所に戻ってきた。)
「…………もうダメかと思ってた………。」
消え入るような小さな声で、私が口にした瞬間だった。
「他人の部屋で一体何をしているんですか?」
酷く冷たい彼の声に、微睡んでいた私の意識が一気に覚醒した。
目の前には驚いた顔をした同僚がいた。
私はしっかりと山川くんに抱きついている。
「………山川………くん………?!」
山川くんは“さぁ?”とでも言うように眉を動かして、私を見つめている。
ますます私の脳内はパニック状態になった。
「………そうゆう事か。やけに吹っ切れたような物言いで来たと思ったら、次の男がいたわけだ。お互い様だし別に隠さなくてもいい。…だけど、その続きをするなら、場所を変えてくれ。」
冷たい視線を私に投げると、彼は部屋を出ていった。
直ぐ様追いかけて私は廊下で呼び止めた。
「待って!!連理!!違う!!今のは誤解でー」
「誤解?誤解だとして、もう俺に弁解する必要はない!」
「そうじゃなくて……こっち向いてよ!!私は連理とずっと一緒にー」
「それ以上言うなっ!!!」
劈くような声が人気のない廊下に響いた。