Pathological love
美保ちゃんの後を追って踏み出した途端、いきなり腕を強く引かれた。
「っ!?」
驚いて振り返ろうとした瞬間、甘ったるい香水の香りと共に耳許で声が響いた。
「以前はどうであれ、彼はもう私のモノですから物欲しそうな顔はもうしないでくださいね?」
若く綺麗な笑顔を醜く歪ませて、彼女は微笑んでいた。
「初めて会った日、私に恥を掻かせた償い……してくださいね?」
ショックで何も言えずに固まっていると、彼女は何も無かったかの様に小さく頭を下げて去って行った。
「水川主任?……令子さん!!どうしたんですか?早く行きましょう!」
ドキドキと動悸が激しい中、私の頭はパニックになっている。
彼女は何もかも知っていて彼と婚約した?
私は頭を整理する事が出来ずにフラフラと次のブースへと向かって行ったけれど、この後の事は殆んど覚えていなかった。
気がつくと、いつの間にか全てが終了し、準備していた打ち上げ会場へと向かっていた。
「令子さん!!聞いてます?大丈夫ですか?」
「えっ?!何?ごめん!もう一度言ってくれる?」
気の抜けた私の返事に、美保ちゃんは諦めた様に溜め息をつくと、私のバックを掴んだ。
「着きましたから降りますよ!」
「えっ?あぁ、ごめん!」
到着した打ち上げ会場は有名な高級ホテル。
「さっすが、白精堂!!気前がいいですね!!ここ、お料理美味しいんですよね~!!令子さん!私もうお腹ペコペコなんです!早く行きましょう!!」