Pathological love
18. encounter
まるで身体中の血が沸き立って、全部が頭に昇った様だ。
苛立ちに身体が支配されてどうしょうもない。
彼女にやつ当たるなんて、間違っているのにどうしても抑えられなかった。
傷ついた彼女の顔が何度も浮かんできて、頭から離れない。
「クソッ!!」
やり場のない怒りを俺はエレベーターの壁にぶつけた。
鈍い音が響いて、拳からは血が滲んだけれど、俺の心は一行に晴れなかった。
自分のマンションの丁度ドアに差し掛かった所だった。
見た事も無い女性が話し掛けて来た。
「…あの、…すいませんが、もしかして水川さんの婚約者の方ですか?」
「えっ?」
「お隣の方ですよね?以前から令子ちゃんに聞いてたんです。婚約者が隣に住んでいるって…こちら側は誰も入っていない様なので。ここの部屋の方ならあなたがー」
中年の女性が、人の良さそうな笑顔を浮かべて近寄って来たかと思うと、バックから名刺を1枚取り出して、差し出してきた。
「私はホスピスで看護師をしている外邑と申します。すいませんが令子ちゃんと連絡取れませんか?聞いていると思いますが、お母さんの容態が余りよくなくて…」
「容態?」
「ええ、ご存知だと思いますが末期ですから…いつ何が起きてもおかしくありません。」
「っ?!とっ取り合えず連絡してみますから、ここでは何なんで、私の家にどうぞ!」
「すいません。」
俺は部屋の鍵を開けながら、かなり動揺していた。
一体どうゆう事なんだ?
令子が日課の様に母親に電話を掛けている様子が浮かんだ。
「あの?でも、毎日の様に令子さんは電話してましたよね?それなのに連絡が取れないんですか?」