Pathological love
次の日から俺は、ずっと同僚に任せていた間宮印刷への出向に自ら向かう事にした。
あの後、お母さんの容態も気になったし、何よりもっと彼女の事を知りたかったからだ。
営業一課を訪ねてみたが案の定令子は休みを取っていた。
本人以外で彼女の過去を知るもの、それはただの同僚じゃ意味がない、目当ては一人。
「すいません、徳永さんを呼んで頂けますか?」
「えっ?わぁっ!秋山さん?嘘!!どうしてこんな所に?私ファンなんです!!」
「それはどーも。」
「あっ!徳永さんですよね?待っててください!」
事務の若い女子社員は騒ぎながら奥に入っていった。
白精堂の仕事が大成功して以来、俺は輪を掛けてよくこんな反応をされるようになった。
名前が売れた証なのだから当初の目的通りの筈なのに、俺の心は浮くどころか沈む一方だった。
「私に何かご用ですか?」
「デザイン部の秋山 連理です。あなたに聞きたい事があります。少し時間ありますか?」
「ああ、君が秋山くんか………今はちょっと忙しいんだ。夜でもいいかな?」
「はい。」
「私も君に話があったんだ……丁度よかった。」
徳永さんは独特の雰囲気を醸し出しながら、余裕の笑みを浮かべていた。
この人なら彼女の事を知っている筈だ。
俺は、この笑顔の挑戦状を受ける事にした。