Pathological love
「彼女を騙してたんですか?どうしてそんなことー」
「結果的には騙した事になったけれど、気持ちは本気だったよ。彼女と居ると楽しかったし、妻と居るより安らげた。新人の頃の令は眩しくて、ピュアでどこか寂しげな感じだった。俺はどんどん惹かれていったよ。ダメだと分かっていても止められなかった。君なら分かるだろ?彼女と居ると、どんどんはまって離れがたくなる感じ。」
徳永さんに問われて、俺の胸は何かを思い出してきゅうっと苦しくなる。
自分に問い掛けるように徳永さんに問い掛ける。
「……………それなら、どうして別れたんですか?」
「私の妻が会社にバラした所為もあるが、本当は彼女の母親に別れてくれと泣いて懇願されたんだ。彼女の母親は父親の不倫が原因で離婚していた。母親が俺を嫌ったんだよ。そうでなければ妻と別れて彼女と結婚するつもりだった。」
父親が不倫していたのに、令子はどうして自分もまた同じ道を歩んでいたのだろう。
俺がホテルで会ったあの男は確実に妻帯者だった。
少なくとも令子の方は、遊びでも本気でもない関係の様に歪んで見えた。
「実際、令の母親からは毎日の様に電話があって、彼女はその度に思い悩んでいた。それが少し辛いとも一度だけ漏らしたこともあったし……でも、女手一つで育てて貰ったから、お母さんの期待も裏切れないとも言っていたな。俺はそんな彼女を救い出してあげたかった。」
その時、俺は何かを感じとった。
もしかしたら、令子も俺と同じ様に……ー
「今思うと、令は俺に自分の父親を見ていたのかも知れないな。あの頃の彼女は、俺にいつも甘えて来ていたから。久し振りに会ったら、すっかり一人前の自立した女性になっていて見違えたよ。君と出会った所為かな?」