Pathological love
令子がずっと仕事を頑張っていた事は、近くでずっと見てきたから十分分かっていたつもりだったけれど、何故そんなにキャリアにこだわっているのかは知ろうとも思わなかった。
こだわる先には必ず理由がある筈なのに……。
「俺は………最低だ……。」
「今、彼女のお母さんは深刻な状況です。先程連絡がありました。どう転んだとしても、彼女は自分を責めるでしょう……。もう、あなたの元へ帰って来ないかも知れません……水川さんをまた独りにしていいんですか?秋山さん……今度はあなたが勇気を出す番じゃないんですか?」
黒木さんの言葉を受けて俺はいつの間にか立ち上がっていた。
「未来(さき)の事は今は分からない、でも俺は今すぐ彼女の元へ行きたいと思っているんですけど、それだけじゃダメですか?」
俺はいつの間にか幼い頃の様に、自分の気持ちを真っ直ぐに、人にぶつける事が出来る様になっていた。
黒木さんは否定することなく、優しく微笑んで俺を見つめる。
まるで、何て答えるか分かっていたかの様に。
「私達は今を生きているんです……それで上等だと思います!いってらっしゃい!!」
俺は深く頭を下げて、踵を返すとそのまま駆け出した。
早く令子に会いたい……。
彼女が辛い時、
悲しい時、
苦しい時、
そんな時こそ傍にいて、寄り添っていたい。
俺はそんな一心で自宅へと向かった。
たしか、外邑さんから名刺を貰っていたはずだ。
連絡のつかない俺は、それを頼りに今は向かうしかない。
“令子”
俺は何度も心の中で令子の名前を呼んだ。
今、不安で押し潰されそうな彼女に、少しでも届くように………。