Pathological love
身体に繋がれた無数の管。
静まり返った病室の中、母親が横になっている。
ヒューヒューと辛そうに肩で息をして、呼び掛けにも殆ど応える気力もなく、ただ一点を見つめたまま。
私は途方に暮れていた。
もっと早く連絡に気づいていれば、ずっと母の近くに居てあげれば、色んな後悔が次々に頭をもたげ、そして虚しく消えていった。
窓の外に目をやると、こんな時でも太陽が眩しく、輝いていて、まるでこの部屋とは別世界の様に見えた。
「お母さん……ごめんね……お母さんの言う事訊かなかったから、また失敗しちゃった。だから、お母さん怒ってるんでしょ?だから、私と話してくれないんでしょ?」
虚しく響く私の声は、応える人が居ないこの部屋ではまるで、独り言の様に響く。
不意にノックの音が鳴り、看護師の外邑さんが入って来た。
「令子ちゃん、少し休んで?あれからずっと何も食べて無いし、寝てないでしょ?私が代わりに看てるから大丈夫よ!何かあったら直ぐ呼ぶから。」
「でも私、今は何も喉を通りません……きっと……。」
「飲み物くらいは飲めるでしょ?自販機でいいから、少し休んできて、お母さんの意識が戻った時、あなたが倒れてたらお母さん悲しむわよ?」
「…………………………母は……いえ、……はい。」
身体が何も欲していない事は分かっていた。
意識が回復する…………一縷の望みに掛けたかった。
せめて一言でも言葉を交わしたい。
病室から離れて休憩室の椅子に座ると、ふぅーっと張り詰めていた緊張が溜息と共に空気に解けた。